何事にもリスクはつきもので、リスクをゼロにすることは不可能です。
しかし、私たちは自然とそのリスクに対して4つの行動をとって対応をしてきています。
深く考えたことがない人も多いとは思いますが、新型コロナウイルスをきっかけにいろいろなリスクが懸念されている今こそ、一度このリスクへの対応について考えてみませんか?

リスクの評価

リスクに対してどう対応をするかという前に、リスクの評価をしなくてはなりません。

具体的な例については
fonfun BLOG リスクを評価する方法
こちらをご覧いただくとして、リスクの評価についてまずは下の表をご覧ください。

リスクの影響の大きさ

リスクの影響の大きさ

これはリスクの影響の大きさを評価する際のレベル分けです。
そのリスクが顕現してしまった場合、どの程度の損害を被ることになるか、をまず切り分けます。

リスクの発生頻度

リスクの発生確率別レベル表

つぎに、そのリスクがどの程度発生するかということを検討します。
上にあるものほど発生頻度が高く、すでによく見かけるものといえるでしょう。
リスクを評価して数値化する間でもありませんが、Aに該当するものについてはいくらリスクが大きくないとしても、手戻りの時間を考えると何かしらの対応をすべきでしょう。

リスクの大きさと発生頻度を数値化する

リスクの大きさと発生頻度の数値化

最後に、先のリスクの影響の大きさの数値と発生頻度をあわせ、リスクを評価します。この数字を用いて、この後に説明をしますリスクの対応の4つのうちのどれを選択するかを決定します。

弊社の場合は、この数値を以下のように分類しています。

リスクインデックス​リスクレベル​
1~5​レベルI​許容できない(設計変更)​
6~10​レベルII​望ましくない(対策を講じる)​
11~17​レベルIII​許容できるが検討を要する​
18~20​レベルIV​許容できるが検討を要する​

4つの選択肢

リスクへの対応については、主に4つの選択肢があります。

1つ目はリスクそのものが発生しないように、または発生したとしても影響がないレベルにする等で「リスクの低減」をする。例えば、情報漏洩の可能性がある場合に、認証を通らない限りは社外からアクセスができないようにする等の対応がこれにあたります。行動自体は制限しきってはいないので、回避ではなく、低減に該当すると考えます。

2つ目はリスクとなっている大元をとりのぞいたりすることで「リスクの回避」を行うことです。例えば、情報漏洩の可能性がある場合に、社外からの一切のアクセスを遮断する等が挙げられます。ただし、これは利便性も大きく損なうためリスクがあまりに大きい場合に取られることが多い手段です。

3つ目は「リスクの移転」で、これは保険などに入っておくことや、そもそもの業務を外注してしまうことですが、すべてのリスクを移転することができるわけではないことに注意が必要です。具体的には、外注先については監督責任があるのでその責は負う為です。

最後に「リスクを保有」することです。
これは、許容できるレベルのリスクに限られますが影響が少ない、もしくは発生頻度がまずないという場合、それ以上の対応については費用対効果が見合わないので、許容するということです。

リスクインテリジェンスマップ

ここまで、リスクの評価の仕方を説明しましたが、会社に存在するあらゆるリスクを評価していくにあたり、手探りで実施をするのは効果的ではありません。

そこで、企業の中にある数多くのリスクを考える上で非常に参考になる、有限責任監査法人トーマツが提供するリスクインテリジェンスマップをご紹介したいと思います。
概要版がwebで公開されていますため、是非ご覧になってみてください。
リスク インテリジェンス マップTM(概要版) – Deloitte

この資料を参考にして、今回の新型コロナウイルスを考えた場合、「業務運営と経営インフラ」の「会社資産」のカテゴリにある「人的安全」をはじめとして、かなり多くの部分に関係するリスクが非常に高まっていると考えられます。

すでに報道でもありましたが、神戸のクルーズ船「ルミナス神戸2」の運航をする「ルミナスクルーズ」が民事再生法の申請をしています。
私もランチクルーズ等で利用をしていた船だけに、衝撃をうけましたが、現時点ではこれは他人ごとではなくなってきてしまっています。

あらためて、リスクインテリジェンスマップをご覧ください。
今回の新型コロナウイルスの影響としては、まず「ヒト」から考えてみます。

ヒトに関連した影響

新型コロナウイルスが原因で且つヒトになにかしら影響がある場合、ありえそうなところとしては、企業が安全配慮義務を求められ、従業員を出社させることが難しくなるケースでしょう。

現時点では感染の人数はそれほど多く発表はされていませんが、疑わしい人が十分に検査されているとは言い切れず、感染者が低く出ていると思っている人も多いのではないでしょうか。

それが正しいにしろ、間違っているにしろ、そこがまずリスクとしての考え方の一つです。

万が一、現在「発表が少ないだけで、感染が爆発的にひろがっているとすると」その結果として何が起こりえるのかというところを想定します。
その結果、ありえる可能性が「従業員の中から感染者が出る」「社内で集団感染が発生する」といったところになると考えられます。

では、その結果、何へ影響するかを考えると「生産」かもしれませんし「納品」かもしれません。あらゆることが考えられるでしょう。

このあがったリスクに対して、現時点ではどの程度の可能性がありそうなのか。それを世間のニュース等や他社の状況と照らし合わせたうえで、今の評価を行います。
そのうえで、そのリスクがどの部分まで発生の可能性や影響が大きくなった時に、どのような戦略を打ち出すのかということを考えます。

社内での集団感染はなによりも避けなくてはならないものです。もし、これを引き起こしてしまった場合には、企業は安全配慮義務違反という部分でも影響が出てくる可能性があります。
もし、感染者が一人でも出てしまった場合は、速やかに全員テレワークないしは休業とする必要が出てきます。

しかし、この休業については「会社の責による」ものであるため、給与の6割の休業補償を支払う必要が出てきます。

そうなると、資金的な部分へも影響があるとなるのです。

モノに関連した影響

次に、モノに関連したものを考えてみます。
一番簡単に考えられるものであれば「生産」でしょう。仕入れで素材が納品されてこない。海外での感染が爆発的に広がってしまい輸入品が来なくなるといったものがすぐに思いつくのではないでしょうか。

また、ヒトとも関連する部分で流通が止まってしまうといったことも考えられます。
モノ自体はストック等で対応できるだけ十分そろっているにもかかわらず、流通が滞ってしまいモノを移動できなくなると、それは納品に大きな影響になります。

カネに関連した影響

最後に、カネに関連した影響を考えます。
今後なにが起こるかはわかりませんが、経営者としては現在のようなときには、何がどう転んでも対応をできるように、キャッシュの確保が求められます。

しかし、それは他も同じ状態です。

キャッシュの確保のためには、キャッシュの流出を止めることと、売り上げを増やすことと、借入と手段は実にシンプルです。
しかし、借入については会社の状況によって実施ができるかどうかが大きく変わってくるため、借り入れが実施できるときに借り入れるしかありません。

また、売り上げを上げることと、経費削減という点ですが、これは他の人々や企業も同じ動きになることを考えると、景気が冷え込むという想像は容易にできます。

売り上げに影響をすることが今後発生してくるであろうことは、このことから簡単に想像ができ、またそのリスクが顕現する可能性は高いとみておくのがよいでしょう。

この場合、いかに資金を確保するかということは、政府等の支援なども含めて十分に検討をしなくてはなりません。
政府等の支援についてはこちらをご覧ください。
経済産業省の支援策
日本政策金融公庫 新型コロナウイルスに関する相談窓口

それぞれの状況のリスクを評価する

このように、ヒト・モノ・カネというアプローチから考えるのも非常にやりやすいものかとおもいますが、それだけではすべてを検討するのは難しいかもしれません。

慣れてくると芋づる式に検討できるものがあるのも事実ですが、しかしその場合、どうしても漏れが発生します。そのためにも、このようなインテリジェンスマップのようなツールを利用してあらかじめリスクの大きさを評価し「許容できないレベル」である場合には、何らかの対応をするよう事前に心がけることをお勧めします。