企業活動を続けるにあたって、オフィスを借りるというのは当たり前のように思うかもしれませんが、近年ではオフィスとしての機能は必要最低限に利用したいというニーズに合わせて「バーチャルオフィス」を利用する人が増えています。

バーチャルオフィスは機能が必要最低限であるという点から、コスト面で大きなメリットがあるため、フリーランスやオンラインビジネスをしている事業主が自宅等のプライベートな情報を公開することを嫌い利用するというケースも多くあります。
また、コロナ禍においてテレワークが進み、オフィスへ出勤する必要性がないと判断した経営者がオフィスを解約するというケースも報道でみかけるようになりました。

そのような報道だけを見ていると、非常に魅力的に感じるかもしれませんが、バーチャルオフィスにもメリットだけでなくデメリットもあるので、契約する前に確認しておくと良いことをまとめました。

バーチャルオフィスのメリット

事業に使える住所を格安で借りられるのがバーチャルオフィスの大きなメリットです。
それ以外にも知っておくと良いメリットをまとめました。

イニシャルコストが削減

イニシャルコストとは、簡単に言えば初期費用です。
事業を始めるにあたってオフィスを借りようと思えば大きな出費が必要になります。

エリアによっても違いはあると思いますが、商用のテナントなどを借りる場合は敷金、礼金、保証金などの費用が賃料の半年分から1年分くらいかかる場合が多くあります。当然ながら一等地などの賃料が高い場所ほどコストも高くなります。

バーチャルオフィスの場合は、敷金や礼金などは不要で入会金や保証金などを負担すれば良いだけなのでコストを大きく抑えることができます。

料金については地域や設備によっても異なりますが、安いところでは1か月数千円から借りることができます。

都心一等地の住所も借りられる

事業を始めたばかりの会社でも、審査が通れば都心一等地の住所を一般に公開できるのはバーチャルオフィスの大きなメリットです。
見栄えが良いというだけでも、意外と影響力を及ぼします。

ランニングコストを効率化

サービス内容はオフィスによって異なりますが、必要な時だけ使うスタイルに向いています。

電話受付、FAX、郵便物の受け取り転送、会議室の利用などなど、様々なサービスがバーチャルオフィスには用意されていますが、これらをオフィスを構えて自分で用意するとなると、対応をする人であったり設備の用意、オフィス面積の広さが必要になったりと、コストが大きく膨らみます。

これらの設備等が必要な時に必要なだけ利用でき、さらにはクライアントからの電話の一次受けもサービスとして提供しているところもあるため、小さな会社で起こりがちな電話を取ることができないが故の機会損失を防ぐことも可能です。

このように、金銭面だけでなく、業務効率にも良い効果があると言えます。

自宅住所の登記を避けられる

会社を立ち上げる際には登記は必ず必要ですが、この登記簿については印鑑も不要でだれでも取り寄せることができます。

そのため、ビジネス活動を行う際に、例えば若い女性の起業などで自宅などの住所を登記するのはプライバシーの観点からも問題となります。
また信頼性においても、自宅を登録していたところで有利に働くことは少ないと考えられますので、バーチャルオフィスを利用するメリットがあると考えられます。

自然災害・感染症などの対策にも

東日本大震災などの大きな自然災害、2020年8月の現在において世界中で猛威を奮っているコロナウイルスなどの影響で、緊急時にオフィスとしての機能を利用したい場合にも1ヶ月単位で借りられるところもあるので便利です。

BCPとしてバーチャルオフィスを考える場合、拠点数も重要にはなってきますが、運用コスト自体は実際のオフィスと比べるとずっと低価格ですむため、選択肢としてはもっておいてもいいでしょう。

バーチャルオフィスのデメリット

前半はバーチャルオフィスの良いところを挙げてきましたが、デメリットや注意点もあるので、借りる前にしっかり確認しておきましょう。

ネット検索されると不信感を持たれやすい

今はネットで検索する人が多い時代なので、オフィスが一等地の住所であっても複数の企業が同じ住所で表示される場合があるので、どうしても不信感を持たれやすいです。
それらがリスクとして存在することを、知っておく必要があります。
しかし、バーチャルオフィス自体は全く違法ではないので、クライアントに対しても堂々と誠意を持って対応すれば問題はないとも言えます。

開業できない業種がある

メリットの多い形態ではありますが、許認可のおりない業種もあります。
人材派遣業、職業紹介業、士業、廃棄物処理業、不動産業、建設業などの場合は、実際に活動する実体の伴う事務所などが必要になるので、許可がおりません。
それでも、認可については条件が緩和されるケースもあるようなので、利用するメリットが多いと感じる業種の場合は動向をチェックしておくと良いです。

法人の銀行口座が開設できない場合がある

過去にバーチャルオフィスが詐欺などで悪用されてしまったケースもあるため、どうしても信頼性が落ちてしまう傾向にあります。
それゆえに、バーチャルオフィスで銀行口座が作れるかどうかは基準が明確に定まっていません。
銀行によっては開設不可となるケースもあります。
契約する前に法人口座を作成した実績があるのか? 
また銀行にも事前に問い合わせてみることをオススメします。

誤解を受けやすい

オフィスとして実際に活動する場所ではないために、様々な誤解を受けやすい面があります。
例えば社会保険、年金に加入できないなどがあります。
実際にバーチャルオフィスだから加入できないということはなく、他の理由によるものですがリスクとして受け取られることが多いようです。

運営会社の倒産リスク

契約していた運営会社が廃業になってしまう場合、
登記していた電話番号、住所などが使えなくなるリスクがあります。
契約する前に運営会社がサービスを続けられるのかどうか? 信頼できるかどうかを見極める必要があります。

まとめ

バーチャルオフィスを利用するメリットはとても大きいですが、
最も重要なことはデメリットをしっかり理解することです。

都心一等地で見栄えが良い住所であっても、
運営会社が良くないと、自社が検索された時にも悪い印象を持たれたりするかもしれません。
同じ住所で利用する他の契約者が詐欺などの悪質な利用をすれば、住所が汚れてしまい自社でも被害を受けるかもしれません。

それゆえに、契約する前には運営会社の実績などをキチンと調べましょう。
そして利用した場合にどのようなリスクがあるのかを考えておけば、バーチャルオフィスを利用するメリットはあると考えられます。